ロードバイクでギヤの掛合わせを考える際、留意すべき事柄について簡易な物理計算を論拠として 3D-CAD 図を用いて解説します。チェーン張力(kg)と屈折角の関係からチェーンで発生する機械的損失を簡易式を用いて解説 チェーンリングとスプロケットを選択する際に知識として活用してください。
チェーンが一周するなかで「ドライブ側」と「テンション側」が存在します。ペダル踏力を与えると駆動側には、大きなチェーン張力が発生します。 逆にリアディレーラーのテンショナーが与える張力しか発生しない下側では、チェーン張力は、1kgに満たないものです。チェーンが発生させる摩擦抵抗の多くはドライブ側で発生します。それもチェーンリングに噛み合っていく2歯目まで 反対側では、スプロケットから出てくる2歯前までという非常に狭い場所で局所的に摩擦が発生します。 逆にテンション側では、チェーン張力が低いため極々小さな摩擦しか発生しません。
まずチェーンの屈折をみる前に、チェーン張力と摩擦力について
確りと論拠を得なければなりません。
条件を統一します。
体重 68.5kg
出力 331W
ケイデンス 60rpm
この条件で 50÷25 と 34÷17 のチェーン張力を求めると
50÷25 のチェーン張力 42.19kg
34÷17 のチェーン張力 62.04kg
なんと同じ出力311Wでペダリングした場合でも 34÷17 は 50÷25 の1.47倍ものチェーン張力を発生させることが判ります。
摩擦力について考えるとき
摩擦力(kg) = 荷重(kg) × 摩擦係数 の式を用いて計算します。
荷重 とは、この場合はチェーン張力を指します。 つまり同じチェーンの屈折量でも荷重が 1.47倍 大きい 34÷17 の組み合わせのほうが大きな摩擦を発生させることになります。
50T÷25T の場合 チェーンリングにチェーンがかかり始める際の図
34T÷17T の場合 チェーンリングにチェーンがかかり始める際の図
いよいよ チェーンリングとスプロケット のチェーンの屈折 について考えてみましょう。 駆動側チェーン(車体上側)がチェーンリングに噛み合っていく箇所、1歯目、2歯目、3歯目のチェーン屈折について3Dモデルで観察してみると 上図の50÷25 の場合、直線で進んできたチェーン(太い点線)がチェーンリングに噛み合う1歯目を過ぎた直後、0°から3.60°屈折します。さらに2歯目に移る際、7.20°まで屈折します。 しかし3歯目に移っても 7.20°のまま もうチェーンは同じ角度のままチェーンリングに沿って運動します。 このことからチェーンの屈折による摩擦は、ギヤへのかかり始め2番目までで発生している事が判ります。
50÷25 7.20°
34÷17 10.60°
上図の50÷25 に比べて 下図の34÷17 は、1.47倍も多く屈折して摩擦している事が判ります。
チェーン張力 1.47倍 × 屈折角度 1.47倍 = 摩擦力 2.16倍
※ 摩擦係数は、潤滑など諸条件で異なるので式中の変数についてのみ考察します。
これらの事を考慮して 平地のタイムトライアルでは、より大きなチェーンリング、より大きなスプロケットの組み合わせを用いるわけです。 しかし、ヒルクライムにおいては、健康増進が目的のサイクリストが要求するギヤ比は、ファイナルローで「1.0」であることも珍しくなくスプロケットの限界歯数が34T程という制限もあり、チェーンリングはコンパクトサイズの34Tが主流になったという事です。 乗鞍や富士ヒルでタイムを狙うようなヒルクライマーの場合は、必要ギヤ比も 1.89~2.40 と小さいチェーンリングが必要となる事は、考えにくいので より大きな組み合わせ 34Tよりは、36T を選ぶなどしたほうが、より摩擦抵抗が低減できることになり有利です。
今度は、上から見たチェーンリングとスプロケットの組み合わせについて同じ50÷25 と 34÷17 について考察します。
50÷25 チェーン屈折 4.32° アウター×11速目
34÷17 チェーン屈折 0.32° インナー× 6速目
オレンジ色のチェーンがチェーンリングやスプロケットを結ぶ直線に対して角度を持って屈折すれば、横方向の分力 が発生します。
50÷25 の場合
チェーン張力 42.19kg × sin4.32° = 分力 3.178kg
7.5% も損失が発生します。
34÷17 の場合
チェーン張力 62.04kg × sin0.32° = 分力 0.346kg
0.6%しか損失が発生しません。
アウター×ロー の組み合わせがいかに大きな動力損失を発生させているかお解かり頂けたと思います。
チェーンリングとスプロケットの歯数の組み合わせを考察する場合は、一番多用する組み合わせにおいてチェーンラインの屈折が最小限になるよう
インナーチェンリングなら スプロケット 5,6,7段目に
アウターチェンリングなら スプロケット 2,3,4段目に
競技種目における必要ギヤ比を配置すべきだと言えます。
ギヤ歯先の形状により第一接触点を回避し 駆動抵抗を軽減した F-Zero
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