数あるアルミニウム合金のなかで最強の強度を誇る【A7075-T6】合金 超々ジュラルミンに区分されるこの軽合金はいったいどこが凄いのか バロックギヤはなぜA7075-T6 で作られているのか 材料強度試験 などご紹介します。
競技用自転車のギヤ板は、一般的にA2017等の超ジュラルミンが使われています。 A2017の場合、超々ジュラルミンのA7075と比較すれば硬度で 25% 程柔らかく 引張強度も 25%程弱くなります。 なぜA2017が普及しているかと言えば、ズバリ材料単価がかなり安く済むからです。 A7075-T6 の場合、板材の1kg単価は数千円にもなり とても量産品が採用できる材料ではありません。 ではなぜバロックギヤでは A7075-T6 を採用しているのか? ヒルクライム時のチェーン張力は200kgを越えることも珍しくありません。 そんな極限の状況では、チェーンローラーとギヤ歯先の待遇において材料硬度は少しでも高いほうが良い 歯当たり歯離れ を繰り返すギヤ歯先は、高価であっても A7075-T6 であるべきなのです。
A7075材は信頼のおける材料商社から調達します。 仕入れ毎にミルシートの添付がありますので まず信用して大丈夫なのですが、ここはセルフテストが求められます。 需要家側でも硬さ測定と引張強度試験を行って所定の数値が得られているか確認をします。
「引張強度試験」とは
金属材料の代表的な強度試験方法の一つです。写真のような試験片の両端をつかんでオレンジ色の➡の方向にゆっくりと引き千切ろうと力を加えます。 その際、加えた力と伸びた寸法を測定します。 さらに加えた力を試験片の断面積で除することで単位面積あたりの引張強度を求めます。 ここで得られた数値からT6処理を施したA7075として妥当な強度が得られているか確認をします。 補足ですが最下段の試験片が黒ブチ模様に塗られているのはポアソン比を求めるためリアルタイム3次元変位量を映像から測定するためです。
下グラフの紺色の線は試験片に加えた力(単位はN)です。オレンジ色の線は試験片が引っ張られることで伸びた寸法(単位はmm)です。 ピンク色の線は試験片に発生した応力値(単位はN/mm^2)です。 グラフX軸は経過した時間です。 引張力が最大になった瞬間、123秒あたりで18761N (=1914㎏) の力がかかっています。 試験片の断面積は32㎟なので1平方ミリメートルあたり 59.8kg もの力に耐えたことになります。 この材料の材料証明書には 59.4kg/㎟ と記されています。 記述に間違いはなかったことが確認できました。
グラフ-1
引っ張る力(紺) 伸びた寸法(オレンジ) 発生した応力(ピンク) を示す。
引張強度試験の様子
映像の10秒後あたりで破断します。 その際の引張力は 1914kg でした。
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